小尾さんの死

みすず書房小尾俊人さんが8月15日に亡くなっていたのを知らなかった。
89歳。丸山真男の命日で終戦記念日

最初にみすずの本を見たのは、小学校の6年生の時に、校長の
特別授業で朝永振一郎の「鏡の中の世界」を示して授業をした時である。
 そんなことをなぜ覚えているかというと、当時の小学生にとっては
世界的ノーベル賞を取った人の話題というのは結構記憶に残っている
わけで、もちろんこの時に校長が我々に見せた「鏡の中の世界」が
みすず書房より出ているということはその当時は知らなかったのである。
 そもそも地方の小都市の本屋にはみすず書房の本などは棚にないのである。
最近こそ地方の書店もロードサイドに大型書店を建て、並べる本を揃える
ためか、売れもしない岩波やみすずの本を並べるようになったが、
つい最近まではみすずの本なんぞは本屋で見かけることはできなかった。
 そういう自らの生活圏の文化的貧困に高校時代に気がついて、わざわざ
北陸本線に乗って金沢の香林坊の書店まで本を見に行ったりしたものだった。
 今時の地方の高校生ならば、ネットで新刊情報も古書の情報も、国内ならず
海外まで調べて入手できるので、それこそ文化大革命なのである。
 みすずの本の売れ先も、5割は首都圏で、3割は関西圏、残り2割が地方と
いうことをどこかで読んだことがある。
とすると、現物を常備書店で見ることは地方の高校生にとっては今でも
厳しいことは変わらないのかもしれない。
それでも、向学心のある若者はそういう壁を破って成長してくることを
信じる。