2008-01-01から1年間の記事一覧

ブレンデル最後のコンサート

日本ではあまり報道されていないような気がするが、ついに12月18日にウィーンのムージックフェラインでブレンデル最後のコンサートがあった。 77歳。オケはもちろんウィーンフィルで、指揮はC.マッケラス。モーツアルトピアノ協奏曲9番。吉田秀和さんが「レ…

田中耕太郎長官に対する嫌悪と悪意

本日のタイトルは中村稔「私の昭和史 戦後編下」(青土社)からである。同書でチャタレー事件最高裁判決を起草した田中耕太郎長官について、 中村はその判決文が「芸術至上主義を否定するといいながら、じつは法至上主義を高らかにうたいあげているものであり…

加藤周一死去

12月5日加藤周一氏死去。89歳。合掌。 朝日新聞のみ6日の朝刊一面に記事あり。駅売りの朝日は朝刊に掲載間に合わなかったのか、夕刊一面に掲載。 茂吉・鷗外・杢太郎についての著書が準備中であったはずであるが、どこまで進んでいたのだろう。 喪主は夫人の…

学問とは何か。

アカハラの指摘がまたまた世間をにぎわしているようで。http://d.hatena.ne.jp/jun-jun1965/ 猫猫先生「安藤英正という成蹊大の教授」は「安藤英治」です。 ■アメリカでの例もひとつ ローレンス・サマーズがオバマ政権の国家経済会議委員長に就任し、バナー…

「日本語が亡びるとき」はくるか。

英語の「普遍性」を語るあまり、現に我々がその言語をもって生きている日本語に対してこれほど悲観的になるのが全く理解できない。水村は日本語の、近代日本文学の牙城として何を想定しているのか、本当に守るべきまたは参照すべき日本近代文学とは何か。 鴎…

「レンコン」

性の文化史は、テーマは学問としてやろうとしても、素材が乏しく実証しにくいため、なかなか難しい。 井上章一ならばの追及であるが、参加した若手学者への周囲の眼は温かいものではないようだ。 まえがきに「学会のキャリアアップには、必ずしもつながらな…

村上春樹は

以下はミヨシ・マサオ「抵抗の場へ」p288 「僕自身は村上はつまらない余興家だと思っています。彼は本当に、全く使い捨て可能な作家です。 村上と僕はプリンストンで二時間におよぶ公開討論をしました。僕は「あなたは何も言うことがないのか。 あなたの言っ…

レヴィ・ストロース100歳

28日はクロード・レヴィ・ストロースの100歳の誕生日。 港千尋「レヴィ=ストロースの庭」にブルゴーニュにある彼の別荘を訪問した際の写真があり、その中に書棚を撮影した ものが1枚だけある。プチ・ロベールが並んでいるのはともかく、Bordasの百科事典…

読む人間

読む人間(大江健三郎)読書講義2007年7月初版。2006年後半に池袋ジュンク堂での7回の講演とサイード「晩年のスタイル」のついての講演。 そういえばジュンク堂の講演はすぐ予約満員になっていた。大江さんのは小説よりもこういう本についての講演の方がおも…

様々なるアカハラ

昨日の麻生首相の「医者は非常識な人が多い」発言もすごかったが、学者世界もなかなか大変な世界らしい。指導教官との折り合いがわるかったり、その教授の人格自体が問題あったりすると弟子や周囲の人間がひどい目にあうという世界。 ■折原浩ケース 師匠と弟…

政治家の読書

普通の政治家がどんな本を読んでいるのか、あまり興味もないが・・・。麻生首相が秋葉原だけではまずいとアドバイスする人が いたのか、八重洲ブックセンターにマスコミを引き連れて登場。(11月11日毎日新聞) やはり近いという意味でもこの書店になるのだ…

全集の値段

神田神保町の古本街を歩いていると文学全集や講座ものの値段が恐ろしく安いのに驚く。前の昭和49年の岩波版漱石全集は7000円で、鴎外全集は2万円、選集は8000円、志賀直哉4000円である。それでも売れないらしい。何分場所を取るので、置き場所がなくなっ…

誤訳・悪訳・

大橋洋一先生が悪訳の例をあげている。 その1.フロイトと非ヨーロッパ人 訳者:長原豊 http://d.hatena.ne.jp/rento/20061028 この訳者と鵜飼氏との関係も微妙なんですね。確かに読みにくい日本語だと思ったが。 その2.R.ロバートソンの『グローバリゼー…

ゲルギエフにおける政治と音楽

8月21日にグルジアーロシア紛争がおきた際にさっそくロシア側の意図を汲んで官製支援コンサートを行ったゲルギエフである。一方的にロシアだけを批判する西側報道にも気をつけなければいけないが、愛国者ぶりを発揮する音楽家もあやしい。やっぱりプーチン…

大統領候補の好きな本

CBSの夕方ニュースのKate Couricのインタビューでオバマとマッケイン両候補のFavorite Book を聞いている。 オバマは最初に「私を作った聖書」、それからトニー・モリソンの「ソロモンの雅歌」。加えてシェークスピアのハムレットやリア等の悲劇だという…

人は一生の間に何冊の本を買えるか?

学生時代に1年間に何冊くらい読めるのか、1日1冊で365冊とすれば生涯このペースでいっても2万冊程度か、とがっかりしたものだ。 今日の日経のコラムに東京電力の元社長平岩外四の蔵書42,000点が公開されるという記事が出ていた。漱石全集が8セットもあるとい…

みすず書房と私

みずず書房の新刊の4割は東京都と埼玉、千葉、神奈川の3県で5割、関西で3割後はその他の地域で売れるという話が聞いたことがあるみすず書房の本に関心を寄せる人なんぞは地域的に偏在しているのだ。東京あたりのブックオフではまれにみすずとか岩波の本が、…

ブックオフ傾向と対策

地方へ出張に行くとそこのブックオフへ寄ってみる習慣がついてしまった。田舎へ行けばひょっとすると掘り出し物があるかという淡い期待でいくのだが、現実はまったく逆のことが多い。地方の文化的なレベルをそのまま見せ付けられるようで悲しくなってくる。…

学問の下流化

ついにこういうタイトルの本が出てしまった。(「学問の下流化」竹内洋・中央公論)中身は書評がほとんどであるが、格差問題とか、 全国に文部省役人の天下り先の新設大学をがばがば設立して大学教員12万人。いつの間にこんなに学問大国となったのか。ノーベ…

学術出版は持続可能か?

猫猫先生の学者の「単著」についての文章を読んでいたら、たまたまあった手元の小冊子(こんなものが出ているんですね)に次のインタビューあり。 「むしろ気にかかるのは、モノグラフの「危機」がアメリカでもイギリスでも日本でもあると思うのですが、全然…

西田幾多郎記念哲学館

こんなものができていることがわかった。なんと設計は安藤忠雄。誰が企画をしたのかね。まさか、選挙区が地元のあの「IT」(イット)の元首相ではないだろうな。典型的な箱物行政のような気がするが、田舎に安藤建築がおったててあるのもおもしろいかも。東…

高田さん、お久しぶりです。

大航海の猫猫先生による「<文学>への軽蔑」を池袋ジュンクで立ち読み。80年代の文学や人文学への動向をまとめて、そのとおりとも思うがやはりアカデミズムがどこか「世間」の動きに取り込まれてしまったということが重要かと。学問なんてそんなに流行に左…

憂い顔の「星の王子様」その3

引き続き同書から P107 世の不思議はまだある。「フランス語を少しかじっている」「翻訳家」だという鳥取絹子というひとは、内藤初穂著「星の王子の影とかたち」の<18・鼎談「内藤の翻訳作法」>に登場して、「これだけの名訳」「究極のやりかた」「名訳…

憂い顔の「星の王子様」その2

加藤晴久さんがP136 で「新訳の訳者を含めて、広く世間の人々を惑わせたと思われる珍説」が書いてある「「星の王子さま」をフランス語で読む」の著者加藤恭子さんはこういう経歴です。(同姓同名の方はアナウンサーとか、金沢大がk教授とか、いらっしゃいま…

憂い顔の「星の王子様」

岩波書店内藤訳「星の王子様」の欠陥ぶりを指摘する加藤晴久さんの快著(2007年5月初版)。内藤訳の著作権切れの後、13種類もの翻訳が出る馬鹿騒ぎとその程度の悪さにあきれて、さすが国際フランス語教員連合副会長としては黙っておれないということだろう。…

失言・発言・日本人の劣化

麻生政権はご本人の失言でそのうち崩壊すると思っていたが、閣僚の方から先に出てくるとは。前からこの中山成あきさんという人は、東大法学部卒で旧大蔵官僚であるが阿呆の見本のようなことをいっている人物で、不思議な方だと思っていた。教育タカ派であれ…

自民党総裁室の本棚

麻生新自民党総裁就任のTVニュースを見ていたら、自民党総裁室の椅子に座る麻生さんの画像が何度も流されていた。気になったのは、その後ろの本棚に並んでいる本で、どうみてもまともな本とは思えない。昔、リーダーズダイジェスト社が通販で販売していたシ…

加藤周一と勲章

猫猫先生曰く、「加藤はもちろん左翼であり、護憲派である。しかし加藤は天皇制を認めたことなどない、一貫した反天皇主義者であって、かつ国家の褒賞など貰ったことはない」。でも加藤さんはフランスのレジオン・ド・ヌール勲章をもらっておられますよ。「…

理科系大学教授

東京大学大学院総合文化研究科教授下井守氏が駒場で猫猫先生に歩きながらタバコを吸っていると難癖をつけたらしい。総合文化研究科といいながら理科系の教授らしいのだが、猫猫先生がリンク貼りをしているところをみると、なんだか昔「文科系」の学者がソ連…

高田里惠子の『学歴・階級・軍隊−高学歴兵士たちの憂鬱な日常』

■高田さんの第三弾(中公新書)。いよいよ筆法鋭くわが日本国の男社会の馬鹿振りをばっさりと。男性論客がだらしがないのが多いので、一層気持ちがよい。丸山真男なんざは格好の相手。学生時代から我々男子学生に対して冷たい眼でみていた彼女が忘れられない…