加藤周一死去

12月5日加藤周一氏死去。89歳。合掌。
朝日新聞のみ6日の朝刊一面に記事あり。駅売りの朝日は朝刊に掲載間に合わなかったのか、夕刊一面に掲載。
茂吉・鷗外・杢太郎についての著書が準備中であったはずであるが、どこまで進んでいたのだろう。
喪主は夫人の矢島翠さん。1986年の秋にパリのポンピドーセンターの地下1階で加藤氏の講演を聞いたことが
あるが、この時矢島さんが前の方で聞いておられたことを思い出した。この時の講演は「言葉」をめぐっての
連続企画で、中村雄二郎氏が別の日に西田哲学について講演をしており、その内容は本(西田哲学の脱構築」)に
なっているが、加藤氏の講演は文章になっているのを見たことがない。
 先日の岩波書店「図書」の新書記念号でも「羊の歌」は何人かの人があげていたが、田舎の高校生だった
我々はこの本を読んで、著者の置かれた知的環境や東京と地方の文化的格差に唖然としたものだ。この本の影響下で、
親戚に大学出がひとりもいないような八百屋や自転車屋の田舎の息子たちが「東京の大学へ行かねばならぬ」と発奮した
わけで、そんな若者が全国に他にもいっぱいいただろうと思う。「続羊の歌」の続きは著作集に短いもの載っているが、
本格的に書いて欲しかった。また、「言葉と人間」のようなスタイルの仕事ももっとしてもらいたかった。
NHKには小田実のときのようにスペシャル番組をつくり、過去の講演や特集もまとめて再放送してもらいたい。
また、雑誌も特集号や関連記事を出すならば、どうせ繰り返される「進歩的文化人」批判も結構であるが、
「日本文学史序説」等の残された仕事の評価をしかるべき人がきっちりやってもらいたい。
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吉本隆明氏がついにNHKに登場。
http://www.nhk.or.jp/etv21c/lineup/index.html