張競さんの書評

 毎日新聞25日の今週の本棚:張競・評 『「愛」と「性」の文化史』=佐伯順子・著(角川選書・1575円)

 ◇「恋愛」と「色事」の上下関係を転覆
 本稿を書いている最中、面白いニュースが飛び込んできた。アメリカのサンディエゴに在住するナタリア・ダイラン(仮名)という二十二歳の女性が、大学院の授業料を払うために、インターネットで自分の貞操をオークションにかけた。入札金がたちまち高騰し、十五日現在、最高額の三百七十万ドルに達しているという。奇(く)しくも当人は女性学研究の学士号を持っているほどの才媛(さいえん)である。

 どこにこのニュースがあったのだろう。「貞操」が35億円とはどういう人なのか。いくら才媛といったって。そういうものを売りに出す人がいることは想像できるが。