校正の能力

かつて経済学者の宇沢弘文が日本の出版社の校正能力の高さについて言及していた記憶がある。具体的にはケネス・アローと宇沢が日本で共著を出版しようとしたときに、その出版社(岩波書店か?)の校正係が数式の誤りを指摘してきた例をあげ、ケネス・アローが驚いた例を書いていたのをみたことがある。確かに英語やフランス語の本には大出版社でも誤植があったりして、外国人に辞書を余分に引かせる労力を強いることが多いように思う。
 小生もあるテキストの編集に関わっており、特に若手の書き手の校正能力の低さに驚くことがある。ある種知的能力の表れとも思われ、歴史のあるテキストの誤植や転記ミスによる誤記の解読は学問になるくらいであるからして、あなどれない。こういう裏方仕事が出版文化を支えていることを知っている人は少ない。
 Marks 先生のご指摘のように良き編集者ももちろん責任重大です。
http://d.hatena.ne.jp/DrMarks/20090402/p1
 ところで、神田神保町東京堂書店猫猫先生の新刊が本日も並んでいないのは、誤植の訂正をまってからという書店の方針でもあるのかいな。(里見トン伝は並んでおりましたです。)