崩れる本の下で

中島敦「文学禍」
 アッシリアの博士が地震のために崩れ落ちた粘土板の下に埋まって、文学を呪いながら圧死するという
のがあった。
 先般静岡の地震で一人暮らしの女性が崩れてきた本の下で圧死した事件があった。新聞記事では
雑誌などで天井まで本があったという。金井美恵子さんが「一冊の本」連載の「目白雑録」でどのような
本の下敷きになったのか知りたいという不謹慎な思いにとらわれる、というようなことを書いておられた。本当は
問題は単なる「本」でなく、「どんな本」なのか、ということなのだろう。ではどんな本なのなら本人も満足できるの
だろうか。
つまらぬ著者の馬鹿本の下で死ぬような悲惨なことにもなりかねぬ。大抵の本読みはつまらぬ本も少なからず周囲に所持しているものであるから、笑い事ではない。
そう考えると早く処分すべき本はすべし、とつくづく思った。