魂の午前三時

柴田元幸高橋源一郎「小説の読み方、書き方、訳し方」より高橋の発言
保坂(和志)さんもずっとゴロゴロしているようだけど、あるとき魂の
暗闇の午前三時に行ってきたに違いないと思わせるところがあるじゃない
ですか。・・・でも「俺は魂の午前三時からかえってきたんだぜ」という
風情が残ってしまうところに小説というか文学の最後の自負がある。
・・・冥界に言ってきたけど全然落ち着いていて、別に「俺は冥界に
いってきたぜ」とはいわないんだけど、でも自負だけはある。それも
なくていいということになったら、じゃあ小説家や作家は何を自分の
存在理由にしていいのか。

ノルマンディ上陸作戦に参加し、ドイツ軍との激戦を何度も潜りぬけて
ノイローゼになったサリンジャーもまた「魂の午前三時」を経験している。