天皇制批判の常識

岩波の「世界」に米倉明「Z先生への手紙」が掲載された時には本当に驚いた。
なにしろ経済学部で米倉先生に我妻栄の本を教科書に民法を習っていたところ
でもあり、なにより現役の東大法学部教授が素朴に天皇制のどこがいいのだ、
いいところがあったらいってみろ、とばかりに挑発しているのだ。
 左翼で天皇制批判を言ってみたりする人はいるが、正面からやるひとは
共産党だっていなかった。いくら「世界」だといってもそこまで本当の
ことをいっていいのか、という論文だった。
(現在は世界主要論文選の所収)
 米倉さんは大蔵省に入ったが、やめて学者になった人であり、その講義ぶりも
誠実さがあふれていてその話を聞いているだけでその人格に引き込まれるような
ところがあった。
 ある日、大学の生協の書籍部で立ち読みしていたら、米倉さんが突然入ってきて、
ある棚をめがけていかれた。一体どのような本を見られるのか、と観察していたら、
ピーター・フォークの主演で映画にもなった金塊強盗事件を描いた「ブリンクス」の
翻訳を買っていかれた。あれは何か民法の研究に必要だったのだろうか。
以上、私の記憶にある俗物ではないと思われる人物のゴシップである。