悪訳「正義論」

昨日の毎日新聞のサンデル教授の「これからの正義の話をしよう」書評に松原隆一郎
悪訳としていたロールズ「正義論」の翻訳について触れていたので、昔その翻訳を
読んで頭がいたくなったことを思い出した。

アマゾンの読者評に★ひとつが2票あり。
紀伊国屋書店版「正義論」は大学院生にゼミで英文和訳させたものをそのまま本にしたもので、
私はかつて原文と突き合わせてこの紀伊国屋書店版「正義論」を読みましたが、日本語が
さっぱり意味不明でした。単純な単語の意味を取り違えている箇所も多く、ロールズ
主著が何故このような永きに渡って品切れ状態になっているかは、一にも二にもこの
誤訳悪訳が原因で、誰も買わないからです。このようなひどい本をそのまま出版して
しまった紀伊国屋書店の責任は非常に重大で、ロールズの研究の妨げとなっています。
とにかく、新しい訳で、ようやくまともな「正義論」が出るようですから、読者は
紀伊国屋書店版「正義論」を古本屋で買うことは熟考した上での方が望ましいと思います。」

古書価が2万円もついている。
この翻訳者は誰なのか。監訳者はハイエク全集の訳者でもあるらしい。

矢島 鈞次 経済政策学/急性肺炎/青山学院大学教授/東京工業大学名誉教授

http://snsi-j.jp/boards/undefine/114.html
 この矢島という学者のことをLibertarianism@Japanが次のように書いている。
「この陰謀話のネタ本は「Protocols of the elders of Zions」(ユダヤ人長老の議定書)と
いう本なのだが、この本は”史上最も成功した、かつ最低最悪”の反ユダヤ主義のアジ本である。
それももともとは1797年にフランスの修道士バルエルが書いたフリーメーソン陰謀論の本だったのが、
ドイツ人反ユダヤ主義者のヘルマン ゲードシェによってユダヤ陰謀論として書き換えられ
「ピアリッツ」と題された本として出版された。
さらに、このピアリッツがロシアに渡り、ロシアの秘密警察によって「Protocols of the elders of Zion」
として、さらに脚色と編集が行われた。そして、この捏造書は反ユダヤ主義プロパガンダとして
大いに利用され、ロシアでのユダヤ人虐殺、ヒトラーナチスの思想形成にも影響を与えた。
この本の説明を纏めると大体以上だ。」
「私が前から気になっていたのは、このような本を日本で広めた一人が矢島 鈞次 という東工大の教授で、
しかもハイエクの翻訳者としても知られる人間によってなされたことだ。矢島 鈞次 は翻訳をしただけで、
その内容を全く理解できなかっただろうハイエクの著書と、彼が反ユダヤプロパガンダ本を読んで
その実態を知らずに小躍りして書いたかもしれない「ユダヤプロトコール超裏読み術」なる恥ずべき本
とのギャップは大きすぎる。矢島 鈞次は学者として致命的な恥ずべき本を出したわけだが、彼の汚名
とともにハイエクの著書までが汚されることがないように願うばかりである。」

紀伊国屋書店はお馬鹿なことに次のようなコメントを付けてこの悪書を売っている。
出版社からのコメント
本書は、1971年に刊行された『正義論』(旧邦訳は同書のドイツ語訳にあたって作成された
修正リストをもとに1979年、紀伊國屋書店から刊行、現在品切れ中)の改訂版(1999年刊)を
新たに訳出したものです。三部九章87節の構成は初版と変わりませんが、初版刊行後ロールズ
寄せられた批判、指摘をもとに「自由(の優先権)」「基本財」の説明などに訂正が施されました。
改訂版翻訳にあたっては、多くの〔訳注〕をつけ読者の「読みやすさ」を考慮するとともに、
原注の引用文献の翻訳版刊行情報を充実させ、また420項目の事項索引、280名の人名索引をつけ、
ロールズ研究の便を図っています

京都大学文科の学力低下が指摘されてから久しいが、新入生にこの悪訳を推薦している諸冨徹
という教師がいる。
http://www.s-coop.net/book_50_07/02.html#morodomi