加藤周一とフランス

日仏会館 18:00 加藤周一を記念する講演会をその誕生日ごろに
開催する講演会の第一回。講師は海老坂武氏。1934年生まれだから、今年
76歳であるがとてもそんなお歳には見えない。質問の時に会場の声が
聞き取れないことで、耳が遠くなっておられるのがわかったが。
朝日新聞にも開催が掲載されていたので、席が空いていないことを懸念して
いたが、開演10分前でも一番前に座れた。会場はほぼ満員であるが、若者は
ほとんど見かけず。こういう催しに参加するたびに、若者がいないことに
対して、日本の将来も知れたものという感じがする。
 そもそも開始が18:00というのが、勤労者には参加するなといっている
ようなもの。パリなら20:30開演だろう。1986年にポンピドーセンターでの
加藤先生の講演は20:30からだった。三浦氏は会館の規則というものの即刻
運営方針を改訂してもらいたいものだ。
さて、海老坂氏の講演であるが、加藤氏のフランス滞在から生み出された著作物を
中心に100分にわたって論じるというものであった。「運命」という小説は
著作集、自選集にもないそうで、このシャルトル大聖堂の美を論じた作品は
ぜひ読みたいと思った。
 講演後の質問に、なぜ加藤氏が死の直前にカトリックに受洗したのか、という
質問あり。海老坂先生は、死の前の錯乱とかありうるが、それはわからぬ、加藤氏の
母親がカトリックで死後に出会えることを加藤氏とその妹に語っていたこともあるかも
しれない、ということであった。会場より妹さんは加藤氏の死の前に受洗しており、
会場にいる、との発言あり。
 講演後のワインを片手の会で、海老坂先生にご自身の自伝の第四部はいつ出るのか
お聞きしたところ、あと五年くらい長生きしたら、とのことであった。「羊の歌」は
「続」と「その後」で終わってしまって残念でしたが、と誘い水を出したところ、
「続羊の歌」は「羊の歌」ほど面白くない、とのことでした。