金融工学の黄昏

「すべて僕に任せてください 東工大モーレッ天才助教授の悲劇」今野浩

 著者は東工大金融工学をやっていた人。自慢話が多いのにも閉口するが、
思わず吹き出してしまうようなことを書いている。
 「吉田(夏彦)教授と江藤(淳)教授が犬猿の仲であることははじめから
知っていた。これは保守本流同士の確執である。一方、永井(陽之助)教授と
江藤教授の折り合いの悪さも半端ではなかった。江藤教授を口説いて連れてきた
のは永井教授だが、文学が専門だったはずの江藤教授が領空侵犯して、政治問題
に口を出すようになって以来、衝突を繰り返していた。三角形の第三辺にあたる
永井教授と吉田教授との関係もこじれていたが、これは情緒と論理の対立といえば
よいであろう。」P13

「はじめのうち、文系教授のレトリックにやられっ放しだった私だが、3年目には
ボロ負けすることはなくなった。彼らがマックス・ウェーバーやジョン・メイナード
ケインズなどを引き合いに出して、理系人間を眩惑しようとするときには、数学者
バートランド・ラッセルジョン・フォン・ノイマンに応援を求めた。たとえば
‘従来の延長上で云々‘といえばすむところを、‘このプロセスの解析接続で云々‘
と言えば、文系教授は深追いしてこなかった。永井・江藤教授は強度の数学
コンプレックスを患っていたから、そこを少しつついてやればいいのである。」p14
 こういう非常識な人を前にして、さすがに永井・江藤遼教授もあきれただろうな。
 この本をよめばなぜ日本の金融工学がダメなのか、その一端がわかるような気がする。

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クルーグマンが最近の異常気象の原因を二酸化炭素のせいにしている。
この人の経済学の怪しさと地球温暖化論の怪しさとは相似である。
http://www.nytimes.com/2011/02/07/opinion/07krugman.html?ref=paulkrugman