NHK ETV 吉本隆明

もともと朝日新聞とか、NHKとか、岩波書店とかには出なかった人ではあるが。
「死」を実感し始めて、50年の思索を多数の聴衆に直接語りかけたくなったのだろうか。空を見つめ、腕を宙に舞わせて自己の論を
どもりながら言葉を捜し求める83歳の老人の姿に誰でも打たれるだろう。語られたことはこれまでも彼の読者であれば一度は聞いたこと
のあるような話ではあったが、会場に若い特に女性が多いのに驚いた。何が彼女たちをひきつけたのだろうか。上野千鶴子が「対幻想」
や「共同幻想」にひきつけれられたように、ではあるまい。私(たち)が吉本が語ることに真理や正義を捜し求めたように、何かを
求めているのであろうか。
 糸井は本当は何にひきつけられているのだろうか?。だが、糸井がいなければこの程度のものも後世に残らなかったに違いない。
それこそ、吉本風にいえば、商業主義とか売名とかはいうやつにはいわせておけばいいという気がする。
 吉本に今必要なのは、彼から言葉を引き出せる、優秀な対話者のような気がする。鶴見俊輔は最近の中井久夫にみられるごとく、
良き対話者にめぐまれているが、吉本の場合もそれこそ時間をかけて、話を聞きだす対話者が必要だ。上野千鶴子さん、やりませんか。