教室へ

パリから帰ってくる時にエールフランスの機内で暇つぶしに見た映画に心底驚いた。日本公開時のタイトルは
「ザ・クラス」、原題はEntre les murs。カンヌ映画祭りで2008年に最高賞をとっている。(フランス映画が
Palm d'or を取ったのは21年ぶりらしい)
 パリ19区の移民が多い地区の中学校の授業での教師と生徒とのやり取りを中心に話しが進むが、まさに
フランスの公教育がどういう問題にぶつかっているのか、この映画に集中的に表現されている。日本の
学級崩壊とは別の危機的な状況があるのだが、日本の学校もののドラマとは異なって、ほとんでドキュメンタリ
ではないか、と思わせるような演出で、その場にいるかのようにぐいぐいと引っ張られる。
おもわぬ拾い物をした。日本ではあまり話題にならなかったのではないか。
http://www.sonyclassics.com/theclass/
 この映画には原作の小説があって、この映画で主演の教師役をしたのは、この小説の作者である。
奥本大三郎さんがどこかでこの小説を紹介していて、その小説を読もうかと思って、ちょうど近くの図書館へ
注文したところであったので、余計驚いた。(「教室へ」フランソワ・べゴドー 早川書房2008年12月)
http://www.hayakawa-online.co.jp/product/books/112266.html
この小説の原本はガリマール書店から2006年に出たが、フランスでベストセラーになっている。映画での
教師と生徒とのフランス語のやりとりを見た後で、日本語訳でこのやりとりを読むといくらか迫力が減じるが、
逆にこの原作を映画化した映画制作者の実力がよくわかる。まず小説を読んで、映画をみるのがおすすめです。

追記
奥本大三郎さんが紹介していたのは、NHKの週間ブックレビュー09年5月2日でした。
http://www.nhk.or.jp/book/review/review/20090502.html