現代フランス思想研究者と原発

「私は一応フランスをフィールドにしていますが、
今回の事態を受けて、世界で最も原発依存率の高い国とい
うこの国の側面が、あらためて非常に良く見えるように
なりました。私はチェルノブイリの事故の時期に留学して
いましたのである程度現実は把握してきましたが、フラ
ンスの原発開発の歴史を多少集中的に勉強したのは今回が
初めてです」
「今フランスの世論は一斉に脱原発に傾きつつありま
すが、それは非常に単純な理由で、福島原発事故によって、
食料供給と原発による電力供給という、これまでの主権
主義の二本の柱が両立不可能であることに気づいたか
らです。一回でも深刻な事故が起きたら、食料自給は
永久に不可能になる合理的に考えた場合、原発は他の
エネルギーで代替できる。しかし、一回農地が放射能
汚染されたなら、金輪際外国に食料を頼らざるを得ない。
こうしてフランスの場合、合理的討論が行われるなら、
世論の趨勢が変わり得ることが見えてきた。」
座談会 いまだ無き言葉へ向けて (二〇一一年七月九
日実施)鵜飼 哲の発言
http://hermes-ir.lib.hit-u.ac.jp/rs/bitstream/10086/23010/1/gensha0000600550.pdf

 確かにオランド大統領はサルコジとは異なって原発依存度を
50%まで下げるといって当選したが、その道筋は日本などより
更に不透明で、フッセンハイム原発の10年利用延長などを
見ているとどこまで本気なのかわからない。 
 ここで鵜飼が述べているような原発に対するフランス国民の
感情などは、それほど変わっていないのである。
 福島原発事故問題以降、現代フランス思想を研究していると
自称している連中がちゃんとフランスでの現在までの原発発展を
跡付け、公表する義務があると思っているのだが、「合理的」に
議論して原発推進になったことがバレてしまって困るのか、
そういう仕事をする日本の研究者はいない。
フランスをフィールドワークにしている研究者がこの程度の認識では
困るのである。
 人文学の復権などというならば、ぜひ集中的な勉強の成果の
公表を期待したい。