佐々木力セクハラ事件

未来6月号に未来社社長の西谷能英が「『ハラスメント』という名の権力テロの構造」と題して、大学の独法化等の流れから、佐々木力が原発推進派「御用学者」によりパージされたと書いているのだが、佐々木「東京大学学問論」を読んでみても陰謀論としか思えない。文中に2000年の夏に東大教養学部長であったA 教授から佐々木が次のように言われたことが引用されている。(Aというのは浅野攝郎)
 「君はただでおかない。大学が独立行政法人になったら、上部の管理者権限が強化するので、覚悟しておくように」(同所200ページ)
 それに続けて西谷は「これが事実だとすれば、東大の原子力開発協力に批判的だった佐々木力を意図的にパージしようとしていた強大な学内勢力が存在していたということになる。」と書いているが、浅野が果たして反原発であることから佐々木に対して敵対していたのかどうかさえ、佐々木著を読んでも、西谷のこの文章を読んでも理解しかねるのである。
 このセクハラ事件なるものは、佐々木著を読む限りでは、精神状態が不安定な台湾女子留学生の性向を佐々木が見誤ったために起こった不幸な事件という風にしかみえない。佐々木がいうように、時の学科長や法学部の「査問委員会」なるものも、東大紛争時の医学部教授連並みの対応振りで、その意味ではまだそういう程度のことをやっているのか、という馬鹿振りがうかがわれ、東大原子力関係教授に非常識なのか多いというのも、もっともであるが。

 東大の学問が堕落しつつあるということは、こういう陰謀論ではなく、例えば正面から禄に業績もない教授を採用し、数が増えたことにより質が劣化したというような視点から論じてもらいたい。