谷嶋喬四郎とデリダ

中島義道「東大助手物語」(新潮社)でのデリダを論じる浅田彰を揶揄する谷嶋喬四郎。

「浅田はデリダデリダといっているけ度、デリダとフランス語でまともに
話ができるのかい?」
・・・如才ない助手の佐久間がそれを受取った。
デリダのフランス語も癖があってわかりにくいようですよ。」
糟谷教授は、
「ああそうか、デリダって、アルジェリアだな。じゃ、変なフランス語
同士結構通じるかもしれんな、ハハハ。」
佐久間助手だけが笑った。そこで皆談話室を出て行った。
談話室のこうした雰囲気から、糟谷教授はこのグループ内で尊敬されて
いないことが次第にわかってきた。しかし、本人はそれをまったく
意に介さないという風であった。

そもそもかくいう谷嶋はドイツの研究者とマルクスやウエーバーについて
ドイツ語で論争できたのであろうか。到底そうは思えない。
何もその国の研究者と対象とする人物の母語で論争ができないと研究者である
資格がない、と谷嶋のような主張を肯定するものではない。先方の言語以外で
研究することはありえるだろうし、それを持って価値がないという谷嶋の
議論の方がおかしいのである。