「翻訳と裏切り」の起源

 「翻訳は裏切り」というのはイタリア語から出ているとは知っていたが、誰が言い出したのか、
その起源がよくわからぬ。

「 Traduttore, traditore. 「翻訳者は裏切り者」.翻訳というものが問題にされるときに,よく出てくるイタリア語のフレーズです. ... 「翻訳に誤訳はつきもの」「完全な翻訳などというものはありえない」というふうに,翻訳をめぐる諦念を表わすのに使われることが多いようです.完全な翻訳はありえない;そもそも,Traduttore, traditore が,日本語に訳されて「翻訳者は裏切り者」になってしまうという事実が,それを物語っています.たしかに,「翻訳に誤訳はつきもの」という表面的な意味は伝わっています.けれども,「トラドゥットーレ」と「トラディトーレ」という音の類似が生み出す「シャレっ気」は伝わっていません.」
柴田元幸「翻訳 : 作品の声を聞く」. 小林康夫, 船曳建夫(編)『知の技法 : 東京大学教養学部「基礎演習」テキスト』東京 : 東京大学出版会, 1994, p.62)

クローチェの言葉といっている人もいるが、わざわざクローチェを持ち出す必要があるのかしら。
http://74.125.153.132/search?q=cache:E5pZ-kJqiMAJ:aterui.i.hosei.ac.jp/Default.aspx%3Ftabid%3D151+%E7%BF%BB%E8%A8%B3%E3%80%80%E8%A3%8F%E5%88%87%E3%82%8A&cd=33&hl=ja&ct=clnk&gl=jp


以下の長崎外語大学のフランス語の戸口さんもイタリア語の警句としているが、ちょっと
表現が違う。「《Traduttore, traditore》というイタリア語の警句がある」
http://www.nagasaki-gaigo.ac.jp/toguchi/tog_essai/traducteur.htm


高階秀璽さんがどうしたことか、アーサー・ウエイリー訳の源氏物語について論じた文章で、
フランス語での例を引いている。
「フランスではしばしばtraduction(翻訳)とは trahison(裏切り)だという。」
(「創造」としての翻訳、大航海No70,2009.4)  
別にフランスでなくても日本でもしばしばそういうのだが。

だが、アメリカの大学生はあまり知らないようだ。
http://d.hatena.ne.jp/DrMarks/20090514/p1